緑色のお告げ
まだ日が昇る前のしんと静かな薄闇の中、裏門を抜けてサイロに飼い葉を取りに行く。おば様はいつも私を顎で使う。おかげで早起きにも独りの薄闇にも、すっかり慣れちゃった。きっと、私をぐるりと取り囲んで鳴いて脅かしてくる山羊たちにだって、すぐに慣れちゃうんだろうな。
最初は嫌だったはずの事がだんだん嫌だって分からなくなっていく。そしたら私は、あの山羊みたいに、おば様のために毎日同じ事を繰り返すだけの動物になっちゃうのかな。
――変な事を考えていたせいか、気付けば私は道の真ん中で立ち止まっていて、ぼんやりとただ遠くを見つめていた。いつの間にか空が白んでいる。やがて東の地平線から見えてきた朝日は、この時はいつもとは全然違う姿をしていた。
初めて目にする光景に、しばらく頭が付いていけなかった。そして一瞬だった不思議な時間が終わる頃、私は堪らなくなって叫んでいた。
「緑閃光!」
おばあちゃんが言ってたのはきっとこの事だ。お屋敷の伯爵様が指に付けてるエメラルドの宝石みたいな太陽は、幸せな人生を送る人にしか見えないんだって。それって、私も本当は幸せな人生を送る人だってことなんだ!