昨日の好敵手は今日の編集者
「応援を頼む。魔力がもうじき空っぽだ!」
無線機に向かって怒鳴りつける。
――了解。暫く持ち堪えよ。
「ったく、簡単に言うな!」
魔法剣を大きく振るうが、魔力不足の短い剣先は悉く空を切るばかり。
「ダメだ! 離脱する!」
負けても生きろ、だ。俺はすっかり口に馴染んでしまった移動魔法を躊躇い無く空諳んじる――。
「終盤に誤字」
返された、赤ペンの入った原稿と忌憚ない意見。
「変換時に『空・んじる』とわざわざ切り直しただろう。普通なら出てこない間違いだ。『空で言う』ならあるが。難読漢字を使おうと調子に乗ったな」
「くっ……嫌味なら俺みたいに一つでも原稿を間に合わせてから言いやがれっ」
「そんな強がり、空しくはないか?」