四角と三角
「あれ、りっくん、さっきここにいた?」部屋を覗くなりすぐに質問された。
「え、あ……うん」私は歯切れ悪く返す。「なんでそんなこと……」
「チョコの包み紙」
四つ折りの正方形をしたそれを、彼女は丁寧につまみ上げる。
「え?」
「どうせごみなんだからくしゃっと丸めればいいものを、わざわざしわを伸ばしてきれいに畳むんだよね、りっくんって」
話しながら件の包み紙には目もくれず、まっすぐ私を見据える。あなた気付いてないの? 私はちゃんと知ってるのに――そんな挑発的な表情で。
だから私は言えなかった。そっちは私のもので、まさにその話を彼としながら折ったものだということを。それくらい仲が良いのは私の方だということも。