Glenscape

Twitter300字ss 第34回 お題:「渡す」

クリスマスプレゼント

「はい、これ。メリークリスマス」
 そう言って目の前にぶっきらぼうに差し出された手には、赤いラッピングと白いリボン。手のひらに乗るくらいの小さな箱だ。
「あ、どうもありがと」
 受け取って、視線を上げる。
 一瞬、目が合った。
「お、お礼なんかいいわよ」
 彼女はすぐに顔を背けてしまった。それでも、顔が赤くなったのはよく分かる。
「あの、ほら、あんたがこうやってプレゼントを受け取れるのは、キリスト様が産まれてきてくれたお陰なんだからね。ちゃんと感謝しとくのよ」
 うわぁ、分かりやすくバレバレな照れ隠しだ……。
「なんだか新興宗教の勧誘みたいだね」
「おかしなこと言わないの」
 ちぇっ、自分だって変なことしてるくせに……。

渡すだけ

「あ、辞書忘れた」
みやこにしては珍しいね」
「昨日予習してそのままかも。すぐ二組で借りてくる」
 もう五分前。急がなきゃ。
「柏、待った! 純にこれ渡しといてくれよ」
 不意に差し出された、傷も汚れもない綺麗なノート。そこに、綺麗なとめはねと整ったバランスで格好いい筆致の『榊 純』という文字を見て、思わず手に取ってしまう。
二組あっち四限目これから、数学なんだよ。頼んだ!」
「ちょっと、お礼兼ねて自分で行ったら? ね、京」
「い、いいよ。ついでだもん」
 私の返事に、舞は驚いた顔をする。それは、これがついでどころか重大事件だって彼女は分かっているからだ。
 そして私も……もう後悔してる。榊君と話すなんて、心の準備だけで五分じゃ足りないよ!