追いかける先、彼女の隣
「京、ちょっと味見お願い!」
「あ、例のプレゼント?」
「の、試作品」
手先の器用な舞が作る、均整な粒形のチョコレート。それは口の中でパリッと響いて、中から溢れてきたのは――。
「からいっ!」
「えへへ、ごめんね。ブランデー入りなの」
謝りながら、すかさずお水を差し出す舞。
「彼、この銘柄が好きだっていうから」
このプレゼントの相手は、じきに誕生日を迎える舞の彼氏さんだ。舞とアルバイトが同じ彼は十歳年上。職人を目指して修業中なのだそうだ。舞は、そんな彼を支えたいのだという。
私のことも助けてくれる舞は、私と同い年だけど、なんだか私より先に大人になろうとしているみたい。
大切な親友のそばで、私もついていけるといいな。