合格鉛筆
「見て見て! 今度は五角形の合格鉛筆だよ」
俺に勉強を教わりにきたはずの妹は、そんな予告をして参考書より先に筆箱を広げ始めた。受験生の彼女は最近、受験勉強そっちのけで合格祈願グッズ集めに熱を上げているようだ。もっとも、何かしら収集癖があるのは昔からだけど。
「あれ、それ本当に五角形か?」
「そうだよ。でも正五角形じゃないけどね」
すでに短い鉛筆を受け取って端から見てみると、そのいびつな五角形は、まるで正六角形の頂点を一つ削り取られたような形をしていて――。
はっと顔を上げた俺と目が合うと、彼女は視線に堪り兼ねたように舌を出してごまかす。
「ゆうべ思い付いてすぐやっちゃった」
「現実逃避をするんじゃない!」