Glenscape

Twitter300字ss 第39回 お題:「試す」

合格鉛筆

「見て見て! 今度は五角形の合格鉛筆だよ」
 俺に勉強を教わりにきたはずの妹は、そんな予告をして参考書より先に筆箱を広げ始めた。受験生の彼女は最近、受験勉強そっちのけで合格祈願グッズ集めに熱を上げているようだ。もっとも、何かしら収集癖があるのは昔からだけど。
「あれ、それ本当に五角形か?」
「そうだよ。でも正五角形じゃないけどね」
 すでに短い鉛筆を受け取って端から見てみると、そのいびつな五角形は、まるで正六角形の頂点を一つ削り取られたような形をしていて―。
 はっと顔を上げた俺と目が合うと、彼女は視線にたまり兼ねたように舌を出してごまかす。
「ゆうべ思い付いてすぐやっちゃった」
「現実逃避をするんじゃない!」

お守りの効用

 お守りに鉛筆にチョコレート―。集めた合格祈願グッズを嬉しそうに並べる妹に、俺は呆れてしまっていた。
「あのな、グッズはお前の学力に何の作用もしないんだよ」
「またぁ、お兄ちゃんはドライなんだから。信じるものは救われるんだよ」
「そんな暢気なこと言ってると、足元を掬われるぞ」
「お兄ちゃんの意地悪。ちゃんと勉強だってやってますぅ」
 機嫌が悪くなるといちいち頬を膨らませる、可愛い妹。
「お守りってのはな、くれた相手の応援の心を思い出して自分の励みにするスイッチなんだよ。ちゃんと人からもらったものじゃないと」
 そう言って俺がポケットに手を入れた時―。
「大丈夫。それもちゃんと彼氏にもらった」
「何ィ、彼氏!?」