新しい気持ち
私、柏京がまだ自分の進路を決めかねていた中三の夏。たまたま読んでいたアンソロジーに、とても印象的な一作があった。丁寧な描写や言葉選びに強く惹かれた。凛とした、という言葉はこういう雰囲気を指すのかな、と思った。
その作品を続けて二回読んだあとで、はっと気付いた。
これは県内高校の文芸部誌。そして、この作者はまだ高校一年生だ。
慌てて奥付を見る。刊行は去年の十月。この人は今年二年生で、来年もこの学校にいるはずだ。
急いで通学鞄から進学資料を引っ張り出す。そこは共学の普通科高校で、家から少し遠い。そして、偏差値がちょっぴり高い。でも——。
私は迷わずに両親のいるリビングに向かった。
「私、志望校決めた!」