柊部長の鞄の中身
かちかちとマウスの鳴らす音。さらさらと鉛筆の擦れる音。二つが揃って止んだとき、部長が立ち上がった。
「終わりにしよう」
今日の文芸部に最後まで残っていたのは二人だけだった。私も「はい」と続けて片付けを始める。
柊智部長はかっこいい人だ。凛として理知的で、大人びた雰囲気。そんな人だから、机から落としてしまった鞄の中身はとても意外で、印象的だった。
がしゃっと音を立てて散らばったのは、キャラメル、マシュマロ、チョコレート――。何種類もの甘いお菓子を、顔を赤らめて慌てた手付きで拾い集める柊部長。
「甘いの、お好きだったんですね」
思わず問いかけた言葉に「そうよ」と小さく返す部長を、なんだか可愛く思ってしまった。