Glenscape

Twitter300字ss 第49回 お題:「灯す」

灯火親しむべき候

 月に一度のお買い物の日。それまで何度も本屋に通って、厳選した一冊を購入する。際限なく買い過ぎてしまわないよう、そういうルールにしてある。
 買った本は袋から出して、ベッドに近い机の隅に置いておく。しばらくは手を付けないで、何かをしながら眺めるだけ。そして、夕食も宿題もお風呂も全部済ませた後で、ベッドの中から手を伸ばす。明かりは白熱球の読書灯。オレンジ色の淡い光が、視界を手元の本だけに集中させてくれる。
 いよいよ指先が表紙をめくる、この一瞬が、とても好き。

「本一冊に大げさだねぇ。まるで儀式みたい」
 私の話を、まいはそう評した。
「でも、何でも大げさな方が一層楽しめるのかな。自分は自分の盛り上げ役なんだね」