吊り橋の向こうの人影
「京って音楽聴かないよね」
「うん、全然。舞はどんなの聴くの?」
「あたしは『arche』! 声も姿も格好良いの!」
よくぞ聞いてくれたとばかりの返事には苦笑しつつ、見せられたケータイを覗き込む。
「お、アルケーじゃん」
急に耳元で声がして、びっくりした。
「森君、知ってるの? インディーズだよ?」
「前にライブでこっち来てさ。それ見て以来ずっと聴いてる」
意外な共通点で盛り上がっていく二人。一方、私は苦手な「不意の人の気配」にまだどきどきしている。
「でも純に教えたら、あいつ俺よりハマってさ。カップリング曲の英語詞も全部歌えんだよ」
どきどき……え、榊君?
「へぇ、意外……京、どした?」
「CD、私にも貸してほしいな」