水清ければ
柊部長がどんな人かと舞に尋ねられた。
部長は裏表ない正しさで、誰にでも真っ直ぐだ。その態度が優等生ぶっていると、陰で反感を買っているらしい。一方私は、そんな部長の書く清廉で凛とした物語に憧れてここに入学した。噂と私と、両方知っている舞は柊智という人物を計り兼ねているようだ。そして、敵の多い三年生を慕う一年生という私の立場を案じてくれてもいるみたい。
「水清ければ、ってやつかもね」
舞のつぶやきに、私も語を継ぐ。
「そう、綺麗な月が宿ってるんだよ」
「ん?」
「えっ?」
「『水清ければ魚棲まず』じゃないの」
「それも分かるけど、私は『水清ければ月宿る』って言いたい」
「その諺は知らなかった……、京、心酔してるね」