柏京の鞄の中身
柊部長の鞄の中身を知ってしまって以来、私はお菓子を分けてもらうようになった。その度に顔を赤らめ慌てたあの様子を思い出し、これは口止めだろうかと考える。
だけど、そういう秘密は私の鞄にもある。文化祭に向けた部誌制作が始まってから、お守りのように持ち歩いている物。
――今日こそ話してみようかな。
私の声に顔を上げた部長は目を丸くする。
取り出して見せたこの二年前の部誌にも、柊部長の作品が載っている。そして――。
「実は私、これを読んで柊智という人に憧れて、ここに入学したんです」
「そう……、ありがとう」
口ではさらりと返すくせに、はにかむ顔は赤い。でも今回は人の事を言えないなと、自分の頬に手を当てながら思った。