柊部長に憧れる理由(2)
今日も放課後になるとすぐ部室に向かい、部誌の原稿に取り掛かる。
私が書き進めているのは、おてんばなお姫様がお城をこっそり抜け出すお話。恥ずかしくて舞にさえ話せていない粗筋は、課題に沿ってなるだけベタに作っている。
――ひねらず真っ直ぐ、とにかく書き切ること。
そんな標語ができたのも、本好きな文芸部員と言えどみな創作には不慣れだからだ。まず一作完成させる――それがなければ部誌制作も批評会も始まらないのに、その「まず」からして難しいのだと。
だからこそ、と私は智先輩の横顔を盗み見ながら思う。
智先輩が二年前に著した物語は凛として理知的で、「まず」の向こう側にもうあった。だから私の目に格好良く映ったのだろう。