京の執筆スタイル
いつもより遅れて入った部室には、静かな打鍵音だけがあった。部屋に一人きりの智先輩に小さく挨拶をして、私もノートを開く。
「そういえば、京さんの原稿は手書きなんだね」
「はい、パソコンは持ってませんし、ケータイも長文は苦手なので」
今のところ、私にとってはノートに手書きするのが最も効率的な手段だ。でも、部誌に寄稿するこの原稿はパソコンで清書しないと、デジタル提出ができない。
「文化祭が終わったら、タイピング練習をした方がいい。あなたがこれからも、人に見せる文章を書いていくつもりならね」
だけど先輩、不器用な私がどれだけパソコンを練習しても、今の先輩みたいに手と口を別々に動かすことはできないと思います……。