夕影と夕陰
「わぁ、おっきい雲。真っ赤だよ!」
舞が声を上げ、指差す先を私も見る。
曲がり角の先に、大きな入道雲がそびえ立っていた。私たちの背中越しに夕日が照らして、圧倒的な存在感を放っている。
一度それに気が付くと辺りの景色まで意識されて、視界はすっかり夕茜に染まった。そして、少し遅れて寂寥感を連想する。
「京?」
立ち止まったままの私を、舞が振り返る。
「なんか、ものさびしくなっただけ。そういうこと、ない?」
「京は物語の読み過ぎでそういう先入観があるのかも。あたしは京といて寂しくなんかないよ」
「わ、私も……」
舞は西日の眩しさに堪え兼ねたのか途中で前を向いたけど、それまでの私の顔が、日陰になって見えてないといいな。