思わぬメリット
「すごいよ、選び放題だね」
とっても広大なフロア、それが三階建てというのだから、きっととてつもない蔵書量に違いない。こんな本屋が通学路にあったなんて!
「確かに店の大きさは街一番だけど、全部が小説ってわけじゃ――」
舞の言葉を私はもう聞いていなかった。目の前の本の背ばかりたどって歩き、ようやく見つけた小説の棚を端から眺めていく。
何冊目かの本を棚に戻す時、はっと我に返った。にやにやした舞が私の顔を覗き込んできたのだ。
「京、そんな風にはしゃぐんだ」
私は途端に恥ずかしくなって、両手を熱い頬に当てる。どんな風にはしゃいでただろう。どれくらい夢中になっていたんだろう。
今日はもう、本なんて選べないな……。