京の弱気な冒険心
バスを降りて辺りを見渡す私に、舞が先に声をかけてきた。
「なーんだ、京、結局かわいい服着てきてるんじゃん」
「そ、そう……かな? でも舞の方が……すごいよ」
花火大会には浴衣で、と一度は言われたものの、私は浴衣も勇気も持ち合わせていなかった。でも、普通の格好で行くよ、と散々言っておきながら今日のワンピースは人生初のノースリーブだ。そんな私の冒険など知る由もない舞は、腕どころか肩も脚も見せる大胆な格好を平然とやってのけて、私よりはるかに先にいるのだった。
心の準備、してきたつもりで全然足りなかったみたいだ。
「じゃあ行こっか。その内あの人にも会えるかも」
「だめ、会わなくていいから! ぱっと見てぱっと帰ろう」