物語のエッセンス
今日も文芸部室でノートを開く。まだ書き込みの少ないノートを前に手は動かず、ぼんやりしていた。
すると、智先輩からキャラメルをいただいた。理知的でクールな智先輩だけど、意外にも鞄に甘いお菓子を常に隠し持っていることを、私は知ってしまっている。
そういえば私も、見られて恥ずかしいものはうっかり鞄をひっくり返しても飛び出さないように、チャック付きの内ポケットに詰め込んでいる。この創作ノートとか、お守りみたいに持ち歩いている部誌『まど』の既刊とか。
……『鞄の中身はエピソードになる』?
そうだ、私の物語でもお姫さまにポシェットを持たせてみよう。隠すのは、お城の勝手口の合鍵でどうかな。
「何か閃いた?」
「はい!」