得意と不得意の差
四限目の数学では抜き打ちの小テストが行われるだろうと舞は言う。授業の直前、舞がそばに来てささやく。
「公式覚えた? sinαtanβ+tanαsinβ」
「あれっ、tanなんて咲く?」
慌ててノートをめくって答えを探す。その間ずっと舞がくすくす笑うので、何か違うことは間違いないんだと思う。
「cosだ……。もう、いじわるしないでよ」
「京は暗記得意でしょ? 寿限無のフルネーム言えるくらいだもんね」
「一緒じゃないよ。はぁ、数学も物語になったら覚えられるのに」
ため息を漏らす私の前で、涼しい顔の舞。
「それより、数学を暗記教科にすると後が大変だと思うな」
「小テストは暗記でいいよ。期末までに理解すればいいんだもん」