お兄ちゃんにできること
勉強はしっかり見てやった。志望校には十分届く成績だってこの目で確認してるんだ。最近は集中力だってついてきて、よそ見をいちいち指摘することもなくなった。その上ダメ押しでお守りだって渡してある。扱われ方はまるで交通安全のそれだが、きっと妹を守ってくれる。
――他に何かできる?
――もう十分だから。私の代わりに祈ってて。
今朝のやりとりが頭から離れず、足が玄関へと向かった。
「そんなにそわそわして、どちらへ?」
「いやぁ、ちょっと神社の辺りまで散歩でもしようかと……」
見透かされてるんだろうなと振り返る。案の定、母さんは呆れた顔で俺を見ていた。
「あんたねぇ、自分の受験の時は二回とも大した準備をしなかったくせに」