Glenscape

Twitter300字ss 第86回 お題:「買う」

必要ならば神頼みさえ

 電車内に座って本を読む顔をふと上げると、そばに立つ高校生と目が合った。不思議そうに俺の本を見ていた気がして、何となく俺はそれを手で隠すように抱え直した。
 やはり、大学生が中学生の参考書を読むのは不自然だろうか。でも別に物好きで読んでる訳じゃ……いや、広い意味ではそうなのだろうか。
 そもそも今日の行動だって、行きの電車で散々自問自答したのだった。どうして俺は授業の合間を縫ってまで神社へ向かうのか。直接的には「受験する妹に渡すお守りを買うため」だけど、問いの本質は、どうしてそこまで―。
 いや、そんなの最初に決めたはずだ。できることは何でもしてやるんだって。
 妹の成績と志望校を聞かされた、あの夏の日に。