強がりで欲しがりな
「おかえり、お兄ちゃん」
「ただいま。何かいい匂いするな」
「ん、そう?」
「お前、何でエプロン?」
「え? まーたまにはそういう日もあるよ」
「ふーん……、とりあえずお茶飲もうかな」
「あー! ……あ、私も飲むから、ついでに入れてあげる」
ついに慌て始めた妹を見て、俺はピンと来てしまった。
だって、この残り香は焼けた生地とフルーツだし、エプロンの裾にはクリーム。そして俺を冷蔵庫に近づけたくないときた。
おまけに今日は俺の――。
「なあに、そのにやけ顔」
「いや、もうこの歳だし別に」
「そんなこと言わないで素直に受け取ってくれればいいじゃん」
「まあまあ。じゃあ俺は手を洗ってくるかな」
「洗えばいいけど、これは夜だからね!」