文芸部の創部メンバー
部室の窓際には、普段近付かない戸棚がある。そこには文芸部誌『まど』の既刊が収められていて、初号について智先輩と一度だけ話したことがあった。
そういえば、智先輩はここの創部メンバーを知っているような口振りだった。不思議に思って、初号をもう一度開いてみる。部員に柊は見当たらないけど……。
「何見てるの、京さん」
戻ってきた智先輩に、私は直接尋ねた。
「あぁ、その一人とはね。あまり詳しく話せないけど」
「それは、どういう……」
「覆面作家なんだ。ここの出身だって公表してないの」
意外な答えに驚いたけど、謎は一つ増えてしまった。
「どうしてそれを先輩がご存知なんですか」
智先輩は、口元に人差し指を当てて微笑んだ。