Glenscape

Twitter300字ss 第85回 お題:「紙」

京のタイムカプセル

 不思議な手紙が届いていた。宛名は私だけど、差出人も私。よくわからないまま封を切って取り出した便箋を開く瞬間、急に懐かしさがこみ上げてきた。

 五年後のみやこさんへ。私は今、このお気に入りの便せんで手紙を書いています。この便せんが好きな理由を覚えていますか。
 ヒントは左下の模様で、今の私が好きなものです。
 そうだ、この手紙、家族で出かけたイベントの企画だ。その場では書き終えられなくて、家で書いたものを翌日また行って出したんだ。諦めきれなかったくせに何を書けばいいか分からなかったからほとんど自己紹介になって、その分便箋に独自性を求めたんだった。
 五年前の私へ、書く間にとことん考える癖はこの頃から変わってないよ。

おみくじの期限

「そういえば、おみくじっていつまで取っといていいんだろう」
「ん? 取ってあるのか。受かったからもういいだろ」
「だけど、お世話になったし」
「それは俺が教えたおかげだろ?」
 それはそーだけどー、とあしらわれながら渡された白い紙。角はよれて、折り目は擦り切れそう。扱いに注意しつつ開いたら、大吉と書かれていた「学問 今始めれば大成。恋愛運は……っと、見なかったことにしよう。
「ぼろぼろだな。この二、三か月でよっぽど拝み倒したのか」
「ううん、これは去年の初詣で引いたやつ。今年のはちょっと引きが悪かったから、延長で頑張ってもらってた」
『いつまで取っといていいんだろう』の前に、選り好みをするんじゃない」